近年、動物愛護法の改正があり、同法に違反した者をより厳しく罰する方向(厳罰化)の改正がなされています。今回は、物心ついた時から犬猫と共に暮らしてきた一人の愛犬・愛猫家として、ペット問題、次号でペット訴訟について考察していきたいと思います。
執筆者: 弁護士 森村直貴
いわゆる里親詐欺
まず、ペット問題といっても、動物虐待から医療過誤まで多岐に亘ります。
例えば、しばしば問題となるのが、いわゆる里親詐欺です。これは、どういうものかというと、犬や猫を里子に出す際、いわゆるお試し期間であるトライアル期間を設けることがあります。この期間中に里子候補である犬猫がその家にきちんと適応できるかを判断します。もしもその家にうまくなじめない、問題行動を起こす場合には犬猫は返却されることになります。
しかし、このような事態にあるにもかかわらず、譲渡元に何ら連絡を行わず、そのまま犬猫を返却しないという事態に陥ります。これがいわゆる里親詐欺です。
トライアル期間中は犬猫の所有権が保護主に留保されているケースがほとんどですので、このような場合にはトライアル先は犬猫の返還に応じなければなりません。
このようなときにはどのように対応すべきでしょうか。
解決策としては、様々な方法がありますが、上記のケースのような場合保護主が単に「返せ」と言っても素直に要求には応じないでしょう(だからこそ素直に返還に応じないわけですから・・・)
例えば、弁護士に相談したうえで、内容証明郵便などにより、返還を要求することも考えられます。相手方としては、弁護士の名前で書面が出されることにより要求に応じる可能性は比較的高くなると思われます。また、相手方本人と直接交渉するという手段も考えられるでしょう。もっとも、これらの策が功を奏しなかった場合には次の手段としてどのようなものがあるのか、そのメリットとデメリットを次回で解説したいと思います。
医療過誤案件
次に問題となりえるのは、医療過誤案件です。
動物病院で不適切な処置が行われた、あるいは病気の見落としなどにより、残念ながらペットが亡くなってしまうケースです。人間と同様にペットについても医療過誤案件はあります。また、医療過誤そのものではありませんが、トリミングの際にハサミなどでペットを傷つけてしまい死に至らしめてしまった例も見受けられます。
これらのケースでは、病院側、ペットサロン側の対応がどのようなものであったのか、しっかりヒアリングをして、本来あるべき(処置すべき)状態と実際の処置が妥当でなかったことを把握することが肝要であると思われます。
次回は、ペット問題について実際に裁判所を利用した調停や訴訟について解説したいと思います。